図書と旅

旅行と読書が趣味。旅行先で訪ねた図書館の紹介などを綴っていきます。

久喜市立菖蒲図書館(埼玉県)

この日は埼玉県の東部、久喜市へ図書館巡りに出掛けました。
まずは旧菖蒲町の図書館を目指し、車を走らせますが、
道を間違え、旧町役場、現久喜市役所菖蒲支所に入り込んでしまいました。
ビルを見上げると、六階の窓に、本多静六記念館との文字が。

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旧菖蒲町役場、現久喜市役所支所

はて、聞いたことあるような気がするけど誰だっけ?という感じでしたが、寄ってみることにしました。

しかしこの日は日曜日。役所の付属施設ならば、どうせ閉まっているだろう、
と思いつつも、ダメもとで行ってみると、どうやら開いている模様。
正面玄関は閉まっていますが、裏口にある警備室で受付し、エレベータで六階へ。

本多氏は、日本の公園の父だそうで、
エレベータロビー、廊下には全国の観光地、公園のポスターが貼られていました。
いざ室内に入ると、案内人のおじさんがお出迎え。

日本の公園の父というだけあり、関わった公園には、
日比谷公園大沼公園偕楽園奈良公園大濠公園など、全国の名だたるものがずらり。
埼玉県内では川越の伊佐沼公園、大宮公園秩父羊山公園なども。
また、日本初の林学博士でもあり、野辺地駅の防風林など、多くの植林事業にも関わっているそうです。
他に客はおらず、やがて話しかけてきた案内人のおじさんの長い話に付き合うことに。
幸いこの日は時間に余裕があったので、
本多氏は埼玉県を代表する偉人の一人だとか、この記念館は菖蒲町の町会議場跡だとか、有益な話が聞け、
楽しいひと時でした。
ちなみにここは土曜日はお休みとのことで、たまたま日曜日に来たのは実に幸運でした。

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言われてみると、議場の面影が

役所の前も、公園のような緑地になっています。
見慣れない丸まった草が生え揃っていますが、何かと近付いてみると、ラベンダー公園との看板が。
ラベンダーと言えば北海道は富良野のイメージでしたが、実はここ菖蒲も、
あやめ・ラベンダーの里を名乗っていたそうで、よ~く見ると、小さな紫の花が咲いていました。

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ラベンダー公園

図書館目指して再び車を出すと、ほんの数分で到着。
結婚式場か新興宗教団体の施設のような、豪勢で派手な建物です。

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まるで結婚式場

文化ホールも一緒になっており、外にはピザとコーヒーのお店も。
向かいには、「世界かんがい施設遺産 見沼代用水」との看板。
その横には展示物の如く、小さな田圃があり、稲穂がたわわに実をつけていました。

いざ、図書館の中へ。
正面の北西側を中心に、三面が大きな窓になっており、館内はとても明るいです。
陽当たりが良すぎて、本の背表紙が色褪せているように見受けられます。

ここでも本多静六がぐいぐい来るかと思いきや、意外にもここで推しているのは、
楢山節考で有名な深沢七郎でした。
山梨県生まれですが、51歳で当地に移住、農場を始めて、その農場で亡くなったとのこと。
著作と共に、大きなパネルで紹介されていました。

その奥には何と、ハーレクインロマンス専用の棚が。
かなり古びていますが、2000冊近くはありそうで、壮観です。

視聴覚資料は少なめ。特にCDは少なく、せいぜい2、300ほどです。

ローズバーグ・コーナーなる洋書の棚もありました。
菖蒲町と姉妹都市だった、オレゴン州の町の名前のようです。

普通は入口の傍にあることが多い新聞、雑誌コーナーは、奥の窓際にありました。
郷土資料もその近く。菖蒲ゆかりの作家として、
推理作家の泡坂妻夫、「ノンちゃん雲に乗る」の石井桃子などの本が置かれていました。
泡坂氏と菖蒲の関係は謎でしたが、調べてみると、どうやら戦時中にここに疎開していたという縁のようです。
もちろん、本多氏の本もここにはありました。

幼児、児童コーナーは独立した部屋になっていますが、この日は誰もいないようでした。

陽射しのせいで色褪せている、ということを差し引いても、
全体的に置かれている本は古めのものが多いです。
文庫本コーナーも例外でなく、ぼろぼろと言ってもいいくらいのものも並んでいます。
源氏鶏太石川達三、陣出達朗、丹羽文雄円地文子、等々、
失礼ながら、他館では閉架書庫に追いやられているような、一昔前の作家の本が目立ちます。

5年前の情報では、蔵書数は約10万冊。視聴覚は1000点。
当地での開館は平成10年ですが、図書貸出業務を始めたのは昭和56年とのこと。

外に出て南に200mほど行くと、しらさぎ公園なる公園があります。
やはりラベンダーの茂る小高い丘に登ると、先ほどの旧役場と図書館とが見渡せます。

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しらさぎ公園からの眺め

役場や図書館があるのに、周辺は農地や空き地が多く、町の中心という雰囲気はありません。
しかし再び車を出し、北に500mほど進むと、突如ひなびた商店街が現れました。
人気は無く、ほぼシャッター街ですが、そのレトロな雰囲気はなかなか味わい深いものもありました。

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旧菖蒲町の中心地?

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