図書と旅

旅行と読書が趣味。旅行先で訪ねた図書館の紹介などを綴っていきます。

稚内市立図書館(北海道)

宗谷線稚内を目指すため、朝6時に旭川駅へ。
旭川のホテル近くのセイコーマートは営業前。
駅の中にセブンイレブンがありましたが、これもやはり営業前。
朝食の調達はできず、空腹のままやむなく乗車。

途中、名寄で長く停車したので、外に出てお店を探しますが、駅周辺に開いている店は無く。
諦めて、自販機で買ったコーンスープ缶を朝食にします。

電車(厳密には気動車)は、雪に埋もれた原野の中をひたすら走ります。
何も無い所で最徐行を始めたと思ったら、線路に鹿がいたり。

鹿を警笛で追い払います

幌延でも20分停車。
何気なくスマホで調べると、駅のすぐそばに図書館が!
最初から狙っていれば訪問可能でしたが、
初動が遅れてしまったので、時間不足と判断し、断念。

6時間乗り続け、12時過ぎに遂に最北の駅、稚内に到着!
ツーリングで来たことはありますが、鉄道では初めて。

駅近くのホテルに荷物を預け、再び駅へ。
10年前にリニューアルされたらしく、とても綺麗。
二階には何と映画館。
しかし、まだ13時だというのに、次の列車として案内されているのは、17時44分発の特急。
普通列車は日にたった3本。
この利便性では、客が減るのもやむを得ないでしょう。
客が少ないから本数が少ないのか、本数が少ないから客が少ないのか、鶏と卵論になってしまいますが。。

元は稚内港駅だっただけに、海はすぐ近く。
利尻、礼文へのフェリーターミナルは、驚くほど立派で綺麗。

向かいには国際航路のターミナルがありますが、この日は便が無いのか閉まっていました。

続いて、駅から徒歩10分という、樺太記念館へ。
副港市場の二階ですが、市場のお店は開いていません。
併設の日帰り温泉施設は、去年廃業した模様。
昔の稚内港駅の再現セットがあり、ここは見学可能ですが、やはり誰もおらずちょっと不気味。

不安が募りますが、二階の樺太記念館には職員の方がおり、普通に開いていました。
やはり客は私だけでしたが。。
嘗ては日本領で鉄道も走り、稚内が航路の玄関として賑わったという樺太
樺太と北海道を舞台にした壮大なアイヌ史の物語「熱源」を、旅の前に読破しておいたのは正解でした。
ソ連軍の侵攻を恐れて自決したという、九人の乙女のエピソードは胸を打ちます。

日露国境に置かれた標石(のレプリカ)

宗谷本線のコーナーもありました。
廃止の噂もある同線を、皆で乗って残そう、という運動で、図書館でもパネル展示をしているとのこと。
何とか残って欲しいですが、あの本数でもっと乗ってくれと言われても市民も困るかと。。

駅の方に戻る途中の、旧瀬戸邸も見学。
地引き網親方の築約70年の家ということで、それほど古くはありません。
職員の方曰く「普通の家」だとか。。

ここも、やはり私以外の客はいません。

稚内駅近くの商店街は、道行く人も無く、見事なまでのシャッター街
一応日曜日なのですが。

丘の上の稚内公園まで行くのはちょっとしんどいので、途中の氷雪の門まで歩くことに。
しかし、入口に差し掛かった所で、通行止め!

どうしようかと思っていたら、歩いて下りてくる人がいたので、車は駄目でも人は大丈夫と判断して、行ってみます。
道はちゃんと除雪されていて、人も結構いました。
上からは、稚内の町が一望。

氷雪の門からは、樺太の島影がぼんやりと見えました。

九人の乙女の碑もここにあります。

約4km先のノシャップ岬まで、片道は歩こうと思っていましたが、時間も体力も無くなり、
一時間に4本と、田舎町にしては異様に高頻度で走っている、バスに乗ることにしました。

着いたのは4時。
寒流水族館からは蛍の光が流れています。

昔来た時は、真夏なのにえらく寒かった記憶があるのですが、今日は比較的暖か。
夕日の名所なので、本日の日没時間が表示されています。
まだ2時間近く先で、そこまでは付き合えないので、
再びバスに乗り、いよいよ最大の目的地、図書館へ。

初乗りは220円。250円の次はいきなり380円と表示されていたので、いつ料金が上がるかヒヤヒヤしながら乗っていましたが、
ノシャップから南稚内駅の更に先までの6kmほどを、250円で来られました。
安くて便利な宗谷バス

大黒4丁目バス停から徒歩6分と案内されていますが、実際は3分くらいでした。
しかし門柱は見えたものの、本体の姿は雪の壁に隠れて、なかなか見えません。

開館日、開館時間をwebで何度も確認していましたが、
この旅だけで、入れなかった図書館が4つもあるので、実際足を踏み入れるまでは不安で不安で。。
しかし大丈夫でした。
遂に、日本最北の図書館に!

入口は、自動の回転ドアになっています。
まるで高級ホテル。
コロナ対策で、マスクをして来るのは勿論、
マスクを外さないでください、としつこく書かれています。

入ってすぐの所には、リサイクル本のコーナーがありました。今回の旅では、見たのは初めて。
図書館の除籍本でなく、利用者の持ち寄りの本のようです。

まずはCD、DVDのコーナー。
DVDは外国映画、ドラマ中心に充実しています。
稚内・サハリンのコーナーもあり、20枚ほどの映像資料がありました。
これだけ揃っていながら、貸出は出来ず館内視聴のみというのは、ちょっと勿体無い気がします。

漫画も新旧揃っており、なかなかの品揃え。

雑誌はソファを囲むように円形に置かれています。
上には花型の灯り。
撮影許可がもらえたので、写真を貼っておきます。

館内は、かなり広め。
中に入っていくと、和室がありましたが、コロナのためか使用不可。

洋書もそこそこあります。
言語まぜこぜに置かれているのは珍しい。
英語が多いですが、よく見るとロシア語も結構あり、地域性が感じられます。

郷土資料も豊富。
稚内資料だけでも相当な数ですが、宗谷資料、南極関係資料も。
振り返れば、樺太資料。これだけで大きな棚を独占。九人の乙女の本もあります。
その裏は、アイヌ資料。
そのまた裏は北海道資料が計四面と、驚嘆の充実ぶり。

豊富な郷土資料

横には道内各市町史の他、青森県史、市史はまだしも、
埼玉の岩槻市伊奈町桶川市蓮田市史まで。
他にも福井市焼津市彦根市下関市竹富町などなど、全国の色んな町のものがあります。
これら全部が姉妹都市とは思えませんが、どういうチョイスなのか。。?
ともあれ、まさに県立図書館レベル。

「色で読む本」という面白い企画もやっていました。

本のカバーの色だけを基準に同色のものを集めて並べ、虹を作っています。本の例としては、
赤 :イベリコ豚を買いに
黄色:ツレがうつになりまして。
水色:小保方晴子日記
黒 :容疑者Xの献身
白 :デトロイト美術館の奇跡
といった具合。

横には、昔の稚内駅の写真が展示されています。
樺太記念館で紹介されていたものでしょう。

コンピュータの本は、あまりレベルの高いものはありませんでした。

蔵書数は約22万冊。
市立図書館としては70年超の歴史があるようですが、現在のものは2003年の開館とのこと。
正直、最北の図書館という称号に興味はありましたが、
中身にはさほど期待していませんでした。
しかし、人口3万の市のそれとは思えない、見事な充実度でした。
日曜日の夕方、利用者も結構多めでした。
そう言えば、沖縄本島の南端、糸満市の図書館も同じように立派だったことを思い出します。

閉館の6時が迫り、外に出ました。
(平日なら、何と8時まで開館!)
図書館の最寄り駅は、南稚内
元はこちらが稚内駅だったくらいなので、周りはそこそこ賑わっています。
近くで夕食を摂ってから、19時44分の下り最終普通列車で、稚内駅近くのホテルに帰ることに。
充実の一日でした。

夜の稚内

稚内市立図書館