図書と旅

旅行と読書が趣味。旅行先で訪ねた図書館の紹介などを綴っていきます。

矢祭もったいない図書館(福島県 矢祭町)

何とか午前中の内に県境を越え、福島県に入りました。
ほどなく現れるのは、観光名所の矢祭山
紅葉には早いので、この日は素通りするつもりでしたが、
国道沿いに並ぶお土産屋と駐車場の賑わいを見ると、やはり足を止めてしまいました。

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矢祭山公園

名物の焼き鮎を片手に、JR線と久慈川の間の緑地へ。
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矢祭には何年か前にも来たことがあるのですが、
こんな綺麗に整備された緑地があった記憶が無いのですが。。記憶違いかもしれませんが。

更に北に進むと、JR東館駅を中心とした、矢祭町の市街地。

ここには有名な、と言うか今は忘れられていそうですが、開館時には結構話題になった図書館があります。
町の観光パンフレットにも載っています。

図書館があるのは、駅前駐車場の真ん前、
教育委員会、公民館も入る古い建物です。

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もったいない図書館

前には、移動図書館らしき車が停まっていました。
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入ると、自動の検温機がお出迎え。
去年からそうでしたが、茨城、福島はなぜかこれが多いような。
スリッパに履き替えて、廊下を進むと、外観とは裏腹にとても綺麗な図書館が現れます。
床は木製、本棚は側板が木のスチール棚。
高い所の窓には、障子が嵌められています。

ここが有名になったのは、館名の通り、
書店もコンビニも無い町に図書館を、と全国から本の寄付を募り、大量に集まった本と共に
開館に漕ぎ着けたという特異な経緯があるから。
蔵書は司書が責任持って選ぶべき、こんなやり方のものを図書館とは認めない、と
"図書館のプロ"からの批判もあったとのこと。
それはプロではなく、利用者が判断することだと思いますが。。

話題性もあり、開館当初から大いに賑わったようです。
現在も、田舎町の図書館にしては利用者多めに見えます。

蔵書数は40万超とのことですが、館内にはそんなにあるようには到底見えません。
大部分は書庫にあるのでしょう。
寄付が元なので、昔のベストセラー本の大量重複や、開架には不向きの駄本も多いと想像されます。

プロが言う通り、蔵書に癖があるのだろうかと見てみます。
新刊本の棚もありました。東野圭吾の新作などがしっかりあります。
漫画は、手塚治虫が多め。
美味しんぼ」「名探偵コナン」なども。

郷土資料も地元の人の寄付を受けてしっかりありますし、
辞書もあります。

吉村昭櫻井よしこ、の特集コーナーがありました。
吉村氏は当地ゆかりの著作もあるようですが、櫻井氏の方は何の縁か分かりません。
続いて、柳田邦男、絵本作家あべ弘士の特集。
両氏は、当館主催の手づくり絵本コンクールの審査員とのこと。

図書館側が言う通り、あらゆるジャンルを網羅し、蔵書に問題は無いと思いましたが、
学術系の本は少ない気がします。
私がよくチェックする、語学、コンピュータ、旅行はいずれもかなり少なめ。

開館時の寄付が中心なので最近の本は少ないですが、決して無いわけではありません。

CD、DVDコーナーもありますが、数はかなり少なめ。合わせて300枚くらいでしょうか。
CDは、一昔前の演歌が多め。
「福島の昔話」なるDVDシリーズがあるので、アニメかと思ったら、
語り部が話しているのを録画したものでした。

一通り眺めてみて、
新聞はあるものの、雑誌が無い、ということに気付きました。
こればかりは寄付で賄うのは難しいのでしょう。
これは少々残念な点です。

書庫は見学できる時はできるみたいですが、この時は館長がいないので駄目とのこと。
その代わり、38頁にも及ぶ手作り風の図書館パンフレットをもらえました。
それに拠ると、40万冊超の蔵書を集めて開館したのは2007年。
現在の蔵書数は開架6.5万、閉架39.9万の計47.9万冊。
町内の集会所、銀行、郵便局などにも本を置いているようです。
そして貸出は、全国誰でもできるとのこと。
「もったいない図書館の歌」の譜も載っていました。

横にある民俗資料室は、今は何も展示していないとのことでしたが、
農具などは並んでいました。

駅前では、ボランティアの町おこしスタッフが、無料でコーヒー、牛蒡茶を振る舞っていました。

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JR東館駅

平成の大合併の時、早々に「合併しない宣言」をしたことでも知られる矢祭町。
反骨精神を持って、独自の町づくりが行われているようです。

矢祭もったいない図書館