図書と旅

旅行と読書が趣味。旅行先で訪ねた図書館の紹介などを綴っていきます。

千代田区立日比谷図書文化館(東京都)

平日しか開いていない、都心の専門図書館巡りを続けます。
航空図書館を出て、お次はGoogleMapで見つけた経済産業省図書館へ。

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経済産業省

気圧されながらも玄関をくぐり、初老の警備員に図書館はここかと聞いてみると、
そうだけど一般の人は入れないんじゃないですかね?とのこと。
かなりいい加減な回答ですが、元々及び腰で、喧嘩してまで入りたいわけでも無かったので、
あっさり引き下がりました。
webサイトにはそうは書いていないので、恐らく一般人でも入れると思うのですが、、
スーツではない普段着だったので、なめられたのでしょうか。
後になって少々憤りの情が湧いて来ると共に、弱腰すぎた対応をちょっと後悔。

次に目を付けていたのは、日比谷公会堂の裏の市政会館の中にある、市政専門図書館

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市政会館

こちらは警備員もいないので、入れるかなと思いましたが、、
入口ドアに、コロナ対策で前日までの予約制になっている、との貼紙が。。
外から覗いてもほぼ内部が見渡せますが、かなり専門的な感じで、明確な目的が無いと入りにくそう。
地方行政などには多少興味があるものの、少なくとも予約制の間は、もう来ることは無さそうです。

立て続けに当てが外れ、やむなくお隣の日比谷図書文化館へ行くことにしました。
ここはいつでもやっているので、この日はパスしようと思っていたのですが。

嘗ては東京都立日比谷図書館で、20年以上前の学生の頃は結構来たことがあったのですが、
千代田区立になってからはほとんど来た覚えがありません。
外観は昔から変わっていないような。三角柱のビルです。
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一階は、カウンターと有料の博物館施設。

階段で二階へ。
2つのゾーンに分かれています。
柱の一部や棚の番号の色がゾーンごとに分けられています。

まずは、パープルゾーン。
文化財コーナーには、博物館図録などがずらりと並んでいました。
元都立図書館だけあって、蔵書量は相当なものです。

奥には、日比谷図書館の歴史の紹介コーナーが。
明治41年に開館、関東大震災、戦争の空襲での消失を経て、2009年に一度閉館。
2011年に千代田区立として改めて開館し、現在は
図書館、博物館、カレッジの3つが融合した総合文化施設、とのこと。実質はほぼ図書館ですが。

江戸、東京、皇居・皇室などの棚が充実しています。
皇居を抱える千代田区ならではの、郷土資料とも言えそう。

雑誌も都立時代の名残か、実に豊富。300誌はありそうです。

オレンジゾーンは、ビジネス、社会科学の本。

三階に上がります。
階段周りのロビーでは、
センス・オブ・ワンダーを探して レイチェル・カーソン×福岡伸一×上遠恵子」 なる企画展示をしていました。
沈黙の春」で知られる環境問題の祖カーソンと、その翻訳者の上遠氏、彼女の理念に共鳴する福岡氏。
彼らの関連の本が並んでいました。

グリーンゾーンは、人文、自然科学の本。
ソフトウエア開発のバイブル、オライリー・ジャパンの専用コーナーがありました。
大型書店ならともかく、図書館でこんなのを見たのは初めて。
全巻揃っているわけでは無いでしょうが、200冊はありそう。
それ以外のソフトウエアの本は、そこそこと言ったところでした。

ゾーン内に新書・文庫コーナーもありました。小説はありません。

ブルーゾーンは、アート、文学。
美術展のパンフレットが、大量に置いていました。

漫画も少々。「つげ義春大全」「ピーナッツ全集」「火の鳥」などがありました。

映画の本には、映画監督別の仕切り板が。
小説家でなく、映画監督名とは珍しい。蔵書の豊富ぶりが分かります。

こちらのゾーンにも文庫コーナーがあり、小説はこちらでした。
ただし古典ものや海外ものが多く、国内現代小説は少なめ。

ミステリーの誘惑、なる特集展示もしていました。
ホームズ、ポワロ、ブラウン神父、神津恭介、湯川学など古今東西の名探偵の紹介の他、
「密室」「意外な結末」「倒叙」などのジャンル別に本を紹介。

二階、三階とも一番奥の南側の窓には、障子が付いています。
本の日焼け対策でしょうか。

四階は特に何も無いだろうとスルーしそうになりましたが、一応上ってみると、、
本日のハイライトはここでした!

あるのは、特別研究室、上田嘉吉文庫と名の付いた部屋。
室内に足を踏み入れ、いきなり目に入ったのは、大正時代頃の「貴族院議事速記録付録」。
ボロボロなので、取り扱いに注意と書いていますが、普通に手に取って見ることが出来ます。

中に進んでも同様で、古書店にも滅多に無いような古書ばかり、ずらりと並んでいます。壮観!
洋書も多く、まるでヨーロッパの歴史ある図書館のよう。(あまり行ったことは無いですが)
古い本が多いと言えば、熱海市の図書館などを思い出しますが、ちょっとレベルが違います。

レクラム文庫は、1867年創刊のドイツのもの。
岩波文庫のモデルだそうです。
整理中との紙が貼られ、雑然と本が積まれた棚も。

「澁澤男爵歐米漫遊報告」なる本が目に留まりました。
まさに今佳境に入っている、大河ドラマの主人公、渋沢栄一の記。

内田嘉吉は、渋沢と共に産業振興にも貢献したという官僚、政治家だそうです。
彼の16,000冊もの蔵書が元になっており、他の寄贈本も合わせて、
特別研究室の現在の蔵書数は約2万冊とのこと。
当然本は明治、大正、昭和初期のものが中心の貴重なものばかりですが、それが自由に手に取れるのが凄い。。
日比谷図書文化館のオープンに合わせて駿河台から移管したとのことで、
都立図書館時代には無かったものでした。

奥には、有料の別室、特別研究席もありました。

そろそろ出ようとした時、背後から声をかけられました。
室内に展示されている東京駅、台南庁庁舎の模型を是非見て行ってください、とのこと。
声をかけてきたのは何と、その作者の方でした。
紙製の精巧な模型は、見れば見るほど見事なものでした。

それにしても、思いがけず濃厚な体験をしました。
なお図書館全体の蔵書数は、平成29年度の統計で約20.5万冊とのこと。思ったよりは少ない。。
視聴覚資料は、どこにあったのか分かりませんが、僅か61点。

雨が降り注ぎ、12月並みの寒さと言われたこの日、日比谷公園の木々も色づき始めていました。
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この後は江戸川区に用があったので、江戸川区立の図書館にも行くつもりでしたが、
別の所で時間を潰してしまい、結局行けず。
過去最多の1日6館超えもあり得るかと思っていたのですが、結局この日訪問できた図書館は3館でした。

日比谷図書文化館 | 千代田区立図書館